テスラの創業者イーロン・マスク氏がTwitterの買収を表明して一時すごく話題になりました。買収は保留との報道もありましたが、改めて買収の意欲があることを表明しています。
2022年6月16日 マスク氏、ツイッター買収の意欲を改めて表明へ=WSJ
6月17日現在の時価総額285億ドルに対して、440億ドル(日本円で約5.8兆円 ※2022年6月17日時点の為替133.2円で計算)で買収予定とのことですが、この会社の価値はどうやって決めているのでしょうか。何が決め手になるのかご存じない方も多いと思うので、簡単にまとめてみました。
1.3つの株価算定方法
株価算定は、DCF・類似企業比較・純資産営業権法の3種類の内、一部か全ての方法を使って計算を行い、妥当な価格を探ります。
それぞれの方法を簡単に説明すると…
- DCF:評価対象企業が将来にわたって創出するキャッシュ・フローを現在価値に割り引くことにより事業価値を算定する方法
具体的な計算式は、(1年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)+(2年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)²+(3年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)³+…(n年目の将来キャッシュ・フロー)/(1+割引率)n
- 類似企業比較:ビジネスモデル・対象顧客・事業規模などを基に上場企業から類似企業を選定して事業価値を算定する方法
- 純資産営業権法:純資産と営業権(一般的には、営業利益×3-5年)を足して事業価値を算定する方法(中小企業の買収でよく行う計算方法)
上場企業が買収を行う場合、IR情報にそれぞれの手法の算定結果が記載されています。例えばYahoo!が一休を公開買い付けしたときのプレスリリースに株価の算定について、野村證券が●●で●●円から●●円で計算と記載されています。
当社子会社(ヤフー株式会社)による公開買付けの開始に関するお知らせ
ケースバイケースですが、未上場同士であれば細かい算定をせずお互いに合意ができれば価格が決まるケースも多いです。私がアフィリエイト事業を売却した際は収益性や過去の投資額を基に算定した価格に対して買収側が合意いただけたので、契約締結・事業譲渡に伴う作業を含めて1ヵ月程度で終えることができました。
2.株価が高騰するケース
1番で説明した計算方法よりも高い「プレミアム価格」で売却額が決まるケースもあります。
「プレミアム価格」が乗る例は、以下の通り。
1.取引先=顧客資産が魅力的
2.自社にはない特殊な技術を所有(希少性が高い)
3.バリューチェーンで足りていない部分を所持
水平展開と垂直展開、両方のケースがあります。
垂直展開:小売業の会社が上流工程の会社を買収するケース
水平展開:小売業の会社が家具を売っている会社を買収して、家具とのシナジーを想定するケース
例えばCoCo壱番屋がハウス食品に売却した事例は「垂直展開」になります。
3.まとめ
株価算定の方法と株価が高騰するケースを今回取り上げてみました。
持続可能で収益性の高い事業を創造することができれば、売却したい場合いかようにでもできますが、属人的で収益性の低い事業を売ることは困難です。
事業を売りたい場合は持続可能で収益性の高い事業を創造すること、事業を買収したい場合は自社事業とのシナジーや収益性を担保できるのかといった観点で多角的に検討することをおすすめします。